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昨年(2011年)末に放送されたNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」
日露戦争を終結させるために講和条約に向けて小村寿太郎が旅立つシーン。
日の丸の旗を打ち振り、万歳の大合唱をする国民を見つめる随員が、
「帰国の際は、あれの歓声がバカヤロウくらいで済めばいい方でしょうね」とつぶやく。

これの描写は「坂の上の雲」にはなくて、吉村昭の「海の史劇」で描写されていた場面だったはず。

「ポーツマスの旗」は、この場面が物語の起点です。
冒頭、旗を専門に作っている業者はおらず、人形作りが内職で旗を染めていたエピソードから始まります。
旗の需要が激増して大忙しの職人たちの様子から、当時の国民の気分をうかがい知ることができます。

こうした細かな事実を積み重ねて、歴史小説に奥行きと臨場感を与える吉村氏の手法が充分に発揮された作品。
何しろ、天候がどうだったのか、気温はどうだったのか、ポーツマスに蚊がいるのかどうかまで確認して書かれているのですから。

それにしても、戦勝国側でありながら不利な条件がいくつも重なる中で、全知力を出し尽くして立ち向かう小村寿太郎の戦い。
それは日本海海戦や203高地を闘った将兵に勝るとも劣らない激しい戦争です。

さらに見過ごせないのが、日本人の心と戦争の関わり合いです。講和条約の内容に失意を感じ激怒する国民の暴走は、現代の日本人像からは想像もできない激しいものがあります。
日露戦争が太平洋戦争への始まりだった、とはよく言われますが、戦勝に沸き、賠償金がとれないことで怒り、戦争を継続せよとまで叫ぶ日本人。たとえそれが一部の煽動家によるものだとしても、載せられてしまう日本人の精神の危うさが何とも恐ろしい。
太平洋戦争に突入したのは軍部の暴走とはよく言われますが、背景には国民の暗黙の指示があったようにも思えます。

外交の難しさ、政治家の矜持、日本人の戦争観を考えるために是非一度読んでおくべき一冊。




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